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#1がん光免疫療法

「2人に1人はがんになる」そして「3人に1人はがんで死ぬ」と言われますが、2016年の数字でみると、年間約37万人の人ががんで亡くなっています。*
*新たにがんと診断された患者数は延べ99万5,132人(2019年1月16日厚生労働省発表)  初回は、がんの画期的な治療法を開発している先生にお話を伺いました。
 初回は、がんの画期的な治療法を開発している先生にお話を伺いました。

~小林先生が開発された画期的な 新しいがんの治療法とは?~

小林先生:簡単に言うと、一つの薬を前日に打っておいてがんの部分に光(近赤外光)を当てると、がんだけに効いて
くれるという治療法ですね。

~現在の一般的ながん治療とがん光免疫療法の違いは?~

小林先生:今、がんの3大治療(標準
治療)は『外科手術』、『抗がん剤』、そして『放射線』と言われています。この3大治療は、34年前に私が医者になった
頃からそのままずっと使われています。
 外科手術の場合、がんだけを取り除くということはできませんので、正常の臓器と一緒に取ってしまうことになり
ます。放射線治療も、がんがなくなる前に免疫細胞が死んでしまうという問題もあります。また薬の場合も、血液中の
白血球が減ってしまうなどといったことも起こりますので、正常な部分がダメージを受けるリスクがあります。
 しかし、このがん光免疫療法は違います。体への傷が少なく、細胞に対するダメージも少ない点がいいところだと思います。

先生が開発されようとしているのは、最初にがん(腫瘍)が発生した病変(原発巣)を徹底的に攻撃する。
そして転移しているがんも同時にやっつけてしまう。
 さらに、それだけではなく、がんは再発しますから、その再発までも抑えてしまおうと。このような可能性が期待できるのは、僕が知る限り先生のご研究だけだと思います。

~これまでの治療法と比べたメリットとは?~

小林先生:まず光免疫療法の一番いいところは、この治療で体の中で死ぬのはほぼがん細胞のみであり、正常な細胞
は死なないという点です。
 体内には免疫細胞という体を守っている細胞がいるのですが、これに傷がつかない。免疫細胞が傷つかなけ
れば、免疫細胞は壊れたがん細胞だけを「がんだ!」と認識してくれるわけですね。
 この認識ができれば、本来人間の体を防御する免疫細胞ががんを排除するわけです。これまでの治療では、外科手術のときにでもがんと一緒に免疫細胞も取ってしまっていたので、
本当は働いてほしい免疫細胞がいなくなるわけですね。けれども光免疫療法の場合は、壊れたがん細胞をしっかりと
免疫細胞が認識して排除してくれる。
 今ではもう動物実験の中ではできているのですが、一つのがんを治すだけではなく、転移した先の遠くのがんも治すことができる、上手くいけば、それができるということになります。

 ~「体の免疫力を利用する治療法」~

iPS細胞というのは、そもそも作るときに4つの遺伝子を使っているのですが、その内の一つはがんの遺伝子でもあるわけです。従って、がんになりやすい可能性があるということを、山中先生は随分気にされていたのです。
 iPS細胞を作るときの培養液の中に、がん細胞と抗体(免疫)を入れて光を当てれば、がん細胞だけは全部死にますから、結果的に正常細胞は残る。そういう意味でiPS細胞を作るときにもがん光免疫療法は使えるのですよね。

小林先生:そうですね。一度がんという三次元の形のものになってしまうと、がん細胞だけを取り出すのはすごく大変なのです。がん光免疫療法では、深さ2 ~ 3 ㎝までは光を通すことができますから、その中に抗体を見つけてあげて、抗体がその細胞にくっつくと、間違ってがんになった細胞は消えてくれます。

人間というのは本当に上手くできていて、病気にならないようにするために免疫という力を与えてくれている。しかし、がんみたいな厄介なものは、免疫力を弱める、或いは制御するといった力も獲得している。だからこれもがんと免疫
の闘いなのです。
 抗生物質だってそうですよ。ウイルスとアンチバイオティクスの抗生物質の闘いで、ウイルスをようやくやっつけたと思ったら、もう耐性がついて次が出ていると。
 先生のがんに関する研究で、これが完結するのではないかと思っているのです。

小林先生:そうしたいと思っています。仰る通りで、要は本当に闘いなのです。人間は免疫が弱くなるとがんになる確率が増えます。例えばエイズの患者さんには物凄く沢山のがんができるのです。どれだけ免疫ががんを抑え込んでいるか、この病気一つを見ても分かる事だと思います。
 けれども逆に、がんの数を減らして免疫の数を上げれば、この闘いの結果は逆になるはずだということが、この治療の根本的な考え方です。がんの数も減っているけれど、免疫力も落としてしまうというのが現状のがんの治療法だと思うのです。がん光免疫療法の研究が進めば、この戦争は終わってくれると思っています。

免疫力を壊してしまうと正常細胞までもやっつけてしまう。僕はがんの人をたくさん見てきました。いろいろな人を見て、いろいろながんで、いろいろな治療を受けているけど、生き永らえる期間は長くなったとしても、最終的にはお亡くなりになる…。
 結局、抗がん剤漬けになり、免疫力がどんどん落ちていく。何とか免疫力を強くする、あるいは維持してがんを治療する方法はないかなと思うのです。

小林先生:人間の免疫というのは賢いもので、一旦敵だと認識したものは記憶として残します。つまりメモリー機能があるのです。例えば、がんがどこかに隠れているとします。
それが再発してくるときに免疫のメモリー機能があれば、再発したがんを抑え込んでくれることができるだろうと思っています。
がん光免疫療法はいわばワクチンと同じような働きをする可能性があると思っているのです。免疫力を強くする、あるいは維持してがんをやっつける方法を先生が見事に見つけられたのだと思いますよ。

~免疫力を高めるために、気を付けていることとは?~

小林先生:私は医者の不養生を地でいっている人間ですが、気をつけていることと言えばひどい疲れを貯めないとか、栄養バランスの良い食事を摂るといったことです。
 要は免疫力を落とす時間が長いと、がんやその他の疾患にもなりやすいですから、できるだけダウンタイムを減らしてアベレージでいくことが私の唯一の健康法で、あとはもう不養生の極みです。(笑)
 とにかく人間の体の防御を弱めない。ほとんどの場合、免疫が最初の段階で防御してくれていると思っています。
“免疫が落ちているときにがんに負ける”という状況ができることが多いと思うので、その点は気をつけています。

一番大事なことは、先生が仰ったように“免疫力を落とさないこと”だと思っているので、そのためには体温を上げることが大事だと思っています。できるだけ冷たいものを摂らない。温かいものを摂るとかね。
 そして「中庸」ということが大事で、何でも行き過ぎない、足りな過ぎないことをいつも心掛けるようにしています。

小林先生:バランスよく食べることも大事ですね。何かだけ食べるということをすると、もしそれが本当に悪かった場合は非常にダメージになりますね。私の健康法は“できるだけリスクを分散する”ことです。

~がん光免疫療法の研究に打ち込んできた小林先生。この先、思い描く目標とは?~

小林先生:まだこの治療というものが、本当の意味で完成形まで達していないと思うので、とにかくしっかりとした完成形に近づけること。
 そして、先ほど申し上げたように転移したがんもしっかり治す。再発もさせない。この転移と再発いうのは、最もがん患者さんが心配されることだと思っています。光免疫療法はポテンシャルのある治療法だと思っていますので、できればあと2~3年という短期間で仕上げたいなと思っています。
 この研究に関しては僕が世界で一番知っている人間だと思いますから、これをどうやって皆様のお役に立てるように
していくかが課題です。ですから「もう、アメリカで研究も臨床もやるべきことがなくなったな」と判断できたら、日本に帰ってきて患者さんの治療をすることで貢献したいと思っています。

何とかたくさんの人に、それも時期が早ければ早いほどお役に立てると思っています。
 この治療法の開発の初期の頃、患者さんからの問い合わせには、「今はこのような研究をしていて、このくらいの
時期に治療ができそうです」というお返事ができたのですが、今は承認など微妙な時期でなかなかお返事が書けない
ことをご理解いただきたいと思います。

小林久隆先生 プロフィール

NC(I アメリカ国立がん研究所)主任 研究員。57歳。1995年、京都大学医学部大学院を修了後、11年間臨床医を務めた。その後、がん治療の研究に打ち込むため渡米し、研究医に転身。NCI(アメリカ国立がん研究所)において、自らの研究室を立ち上げ基礎研究の道を突き進む。2011年、新しいがん治療法であるがん光免疫療法を発表。副 作用が少なく様々ながんに応用が可能ということで、アメリカだけでなく世界的にも一躍注目を浴びた。

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